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   不動産売却に関する重要な判例 NO.8

手付解除の要件
   裁判年月日 平成6年03月22日 




   裁判所が判断した事項

    手付けの倍額の償還による売買契約の解除と現実の提供の要否



   判決の内容

     売主が手付けの倍額を償還して売買契約を解除するためには、買主に対して
    右額の現実の提供をすることを要する。





   主文

    本件上告を棄却する。
    上告費用は上告人の負担とする。



   判決の理由

     民法五五七条一項により売主が手付けの倍額を償還して契約の解除をするた
    めには、手付けの「倍額ヲ償還シテ」とする同条項の文言からしても、また、買
    主が同条項によって手付けを放棄して契約の解除をする場合との均衡からしても
    単に口頭により手付けの倍額を償還する旨を告げその受領を催告するのみでは足
    りず、買主に現実の提供をすることを要するものというべきである。しかるに、
    原審の適法に確定したところによれば、上告人の手付倍額の償還は、いずれの場
    合も口頭の提供をしたのみであるというのであり、記録によれば、売主である上
    告人は、買主である被上告人に対して手付けの倍額を支払う旨口頭で申し入れた
    旨を主張するにとどまり、それ以上に現実の提供をしたことにつき特段の主張・
    立証をしていないのであるから、原審が契約の解除の効果をもたらす要件の主張
    を欠くものとして、売買契約解除の意思表示が無効であるとしたのは正当であり
    原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づき又は原審で主張してい
    ない事実に基づいて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
     よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官千種秀夫の補足意見
    があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

     裁判官千種秀夫の補足意見は、次のとおりである。
     民法五五七条一項にいう手付けの倍額の「償還」の意義について、若干補足し
    ておきたい。
     売主が手付けの倍額を償還して契約の解除をする場合の手付けの倍額の償還は
    金銭を相手方に交付するという行為の外形からすれば、債務不履行の責めを免れ
    るための弁済の提供に類似する面があるけれども、手付けの償還は、売買契約の
    解除という権利行使の積極要件であるから、債権者の受領を前提とした弁済の提
    供とはおのずからその性格を異にし、相手方の態度いかんにかかわらず、常に現
    実の提供を要するものというべきである。
    もとより現実の提供といっても、相手方の対応等によりその具体的な態様は異な
    らざるを得ないのであって、買主に対して手付けの倍額に相当する現金を交付す
    る場合もあれば、今日のように銀行取引の発達した社会においては、取引の状況
    によっては、いわゆる銀行保証小切手を交付するなど現金の授受と同視し得る経
    済上の利益を得さしめる行為をすれば足りる場合もあるであろう。しかし、いず
    れにしろこれを相手方の支配領域に置いたと同視できる状態にしなければならな
    いのであって、これが同条項にいう「償還」の語意にも合致するゆえんであると
    考える。
     従来、とかく、その外形の類似性から、手付けの「償還」に関して、債務の履
    行としての弁済の提供と明確に区別をすることなく論じられているかにみえるこ
    とに鑑み、一言補足する次第である。





   手付と解除(参考法令)

   民法493条(弁済の提供の方法) 
   1 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権
     者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要す
     るときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。 


   民法557条 (手付) 
   1 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するま
     では、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をす
     ることができる。 
   2 第五百四十五条第三項の規定は、前項の場合には、適用しない。 
















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