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   不動産売却に関する重要な判例 NO.9

売買予約と解除
   裁判年月日 昭和56年06月16日 




   裁判所が判断した事項

     土地の売買予約の成立後当事者双方が予想せずその責に帰することのできない
    事情により価額が高騰したのちにされた予約完結権の行使が信義則に反しないと
    された事例



   裁判の内容

     甲市が貸ビル業者である乙所有の丙土地を道路用地として買収するにあたり、
    その代替地として丁土地を乙に売り渡し、あわせて甲と乙との間で、これに隣接
    する戊土地につき、丙土地上のビルを撤去し丁土地上にaビルを建築するまでの
    間、旧ビルの入居者を収容するための仮事務所として使用する目的で賃貸借契約
    を締結するとともに、期間の定めのない売買予約を締結したが、その後、乙にお
    いて丁土地上にaビルを建築する工事に着手しないまま数年間が推移するうち、
    戊土地が新幹線の用地として国鉄に買収されるという、当事者双方の責に帰する
    ことができず、しかもその予想を超えた事態を生じ、戊土地の時価が予約締結時
    に定められた代金額の六倍弱になつたという事情のもとで、乙が国鉄のための土
    地収用法による収用裁決前に右売買予約の完結権を行使して本契約を成立させ、
    乙が収用裁決による損失補償金を取得することになつたとしても、右売買予約が
    戊土地の所在位置からして甲においてこれを所有していても利用価値が低下する
    ことが予想されたため、乙に買い取つてもらうのを最良の策として、甲から乙に
    買取方を要望した結果成立したものであること、甲と乙とは、戊土地が新幹線の
    用地となることが公表される直前に、いつたん期間満了となつていた戊土地の賃
    貸借契約を重ねて締結したが、その際、売買予約の内容に変更を加え、又は予約
    を失効させるなどの措置を講ずることがなかつたこと等、原判示の事情のもとに
    おいては、他に特段の事情のない限り、乙のした右予約完結権の行使が信義則に
    反して許されないと解することはできない。





   主文

    原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。



   判決の理由

    一 原審は、上告人が昭和四五年二月一八日頃被上告人に到達の書面をもつて被
     上告人に対してした原判示の本件土地についての売買予約完結権の行使の効力
    を判断するにあたり、昭和三八年一一月一一日に上告人と被上告人との間で本件
    土地につき賃貸借契約のほかに売買予約(以下「本件売買予約」という。)が締
    結されるに至つた事情、その後における上告人の本件土地使用の状況、昭和四四
    年一二月四日に本件土地が国鉄山陽新幹線の用地となることに決定した前後の事
    情等を確定したうえ、(1) 本件売買予約は、本件土地に隣接する原判示の代替
    地上に上告人がほぼ二年内にaビル(以下「aビル」という。)を建築し、本件
    土地をaビルと一体のものとして利用することが前提となつていた(原審は、こ
    のことをaビルの建築完成及び右ビル経営上必要な駐車場等用地とすることが本
    件土地買受けの一種の条件となつていた、とも判示している。)が、上告人は、
    aビルの建築についてB市建築主事の建築確認を受け昭和三九年七月二〇日には
    業者との間で工事請負契約を締結したにもかかわらず、代替地の売買契約と本件
    土地の賃貸借契約とが成立したのちも数年間右建築に着工しないままで推移した
    こと、(2) その間、本件土地が新幹線の用地として国鉄に買収されるという、
    当事者双方の全く予想せず、しかも、いずれの責にも帰することのできない事情
    が生じ、そのために本件土地をaビルの裏地として一体的に利用するという目的
    が実現不能となつたこと、(3) 本件土地の取引価額は、本件売買予約が成立し
    た当時からみると大幅に高騰しており、昭和四八年九月二二日に福岡県収用委員
    会によつてされた本件土地の土地収用法による収用裁決における損失補償額の単
    価は一平方メートルあたり約一三万九三五七円であつて、売買予約における約定
    代金額(坪当り八万円)と比較すると六倍弱になるため、上告人による予約完結
    権の行使の効果を是認するときは、上告人は、当初の目的のとおりに本件土地を
    現実に利用することもないまま一億二二四六万三二〇〇円の損失補償金を取得す
    ることとなり、地方公共団体である被上告人の所有する土地によつて前記約定代
    金額との差額である約一億〇一〇〇万円を利得する結果となるのであるが、この
    ような事態と本件売買予約が締結された原判示の覚書作成当時にその基礎として
    認識された事情との間には大きなへだたりがあること、の諸点を挙げて、本件売
    買の完結時点においてなお当初の合意の効力を認め、ひいて予約の完結により成
    立する売買契約の拘束力を認めることは信義衡平の原則に照らして相当でなく、
    予約完結権を行使することは許されない、との判断を示し、右予約完結権の行使
    が有効であることを前提とする上告人の各請求を排斥した。

   二 しかしながら、原審の右判断は民法一条二項の解釈、適用を誤るものであつて
    たやすくこれを是認することができない。その理由は次のとおりである。

   1 原審は、(1) 上告人が代替地上に建築するaビルの完成後、本件土地はその
    裏地としてこれと一体的に利用され、ビルの経営に必要な駐車場等の用地として
    使用することが本件土地買受けの一種の条件となつていたとして、そのような目
    的に供することが不可能になつたことを重視するのであるが、本件土地を将来右
    のような目的に用いることが上告人と被上告人の双方に了解されていたからとい
    つて、そのことから直ちに、右利用目的をもつて本件売買予約が本件土地を右の
    用途に供することが不可能になることを解除条件とする意味における条件とした
    ものと解することはできず(原審もまた、右のような趣旨において条件の語を用
    いたものではないと解される。)、のちに判示するように、被上告人が本件土地
    につき上告人との間で売買予約を締結するに至つた動機が、本件土地の所在位置
    からして本件土地を被上告人において所有した場合の利用価値が将来低下するこ
    とが予想されたため、これを回避するにあり、むしろ被上告人からの要望により
    上告人が買受けることを承諾したものであるとの事情を考慮するならば、aビル
    のための用地として利用することができなくなつた点を過大視するのは相当でな
    い、というべきである。(2)また、原審は、上告人が本件土地につき賃貸借契約
    と売買予約とを締結してのちも数年間aビルの建築に着手しなかつたことを予約
    完結権の行使が信義則違背となるべき事情の一つに挙げている。しかしながら、
    原審の確定したところによれば、上告人と被上告人とは、昭和四〇年一一月に、
    従来、覚書の形式にとどめていた本件土地の賃貸借を正規の契約書に書き改める
    こととして、本件土地につき期間を昭和四二年一二月三一日までとする賃貸借契
    約を締結したのち、本件土地が新幹線の用地となることが公表される直前の同四
    四年一一月一日には期間を同四六年三月三一日までとする賃貸借契約を重ねて締
    結したのであるが、その際、本件売買予約について予約完結権の行使の期間に制
    限を加えるなど予約の内容に変更を加え、又は予約を失効させるなどの措置が講
    じられたことは、原審の認定しないところである。したがつて、被上告人は、本
    件土地につき右の賃貸借契約を締結した昭和四四年一一月ころも、特段の事情の
    ない限り、上告人のaビルの建築着手の遅延を承認しており、また、本件売買予
    約の効力を制限する意図はなかつたものといわざるをえない。(3) 次に、原審
    は、本件土地の価額が売買予約の成立の時点と比較して高騰したことを予約完結
    権の行使が信義則違背となるべき事情の一つに挙げている。しかしながら、本件
    売買予約の完結時における時価(もつとも、原審が比較の対象として取り上げた
    本件土地の価額は前記のように土地収用法に基づく収用裁決に定められた損失補
    償の額であるが、その価額は、上告人が予約完結権を行使した後三年を経た昭和
    四八年二月九日の時点のものである。)が右予約締結時に定められた代金額の六
    倍弱の程度になり、それが当事者双方の責に帰することができず、しかもその予
    想を超えた事情に起因するものであつたとしても、原審の確定した事実関係のも
    とにおいては、右の程度の金額の差異をもつてしてはいまだ予約自体の効力に影
    響を及ぼすものと解することはできず、このことは、予約の目的である本件土地
    が地方公共団体である被上告人の所有する土地であるか否かにかかわらない。
    (4)しかるところ、原審の確定するところによれば、被上告人は、本件土地の位
    置が被上告人から上告人に売り渡された代替地と国鉄鹿児島本線の鉄道線路用地
    との間にはさまれた場所にあり、代替地に上告人によつてaビルが建築されると
    本件土地はビルの裏地になつてしまい、その利用価値が低下するところから、本
    件土地が効果的に利用されるためには上告人にこれを買取つてもらうのが最良の
    策であると考え、上告人に買取り方を要望したところ、上告人においてこれを承
    諾し、本件売買予約が締結されたという事情がある、というのである。

   2 以上のような諸事情を彼此考較するときは、上告人が思わざる利益を得ること
    になるとしても、他に特段の事情のない限り、上告人のした本件売買予約の完結
    権の行使が信義則に反して許されないと解することはできない、というべきであ
    り、これと反対の見解に出て、上告人の予約完結権行使の効力を認めなかつた原
    判決には民法一条二項の解釈、適用を誤つた違法があるものといわざるをえない。

   三 そして、右違法は上告人の主位的請求及び予備的請求を棄却すべきものとした
    原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は、その余の論旨
    につき判断を加えるまでもなく、破棄を免れないところ、本訴請求の当否につい
    てはなお審理を尽くす必要があるので、本件を原審に差し戻すのが相当である。
     よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決
    する。





   売買予約と解除(参考法令)

   民法1条(基本原則) 
   1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。 
   2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 
   3 権利の濫用は、これを許さない。 



   民法556条(売買の一方の予約) 
   1 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の
     効力を生ずる。
   2 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、
     相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の
     催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をし
     ないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。 





















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