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   不動産売却に関する重要な判例 NO.23

借地権の対抗力2
   裁判年月日 昭和41年04月27日 




   裁判所が判断した事項

    土地賃借人が該土地上に長男名義で保存登記をした建物を所有する場合と「建物
   保護ニ関スル法律」第一条による対抗力の有無。



   判決の内容

    土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で
   保存登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に
   対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により、該土地の賃借権をもって対抗する
   ことができないものと解すべきである。





   主文

     原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     被上告人は上告人に対し、松山市a町b番地宅地三四坪二合三勺(実測一一一
    ・一四〇四平方メートル位)を、その地上に存する家屋番号同所第c番のd、居
    宅木造セメント瓦葺二階建、下一八坪三合一勺、上七坪二合九勺の建物を収去し
    て明け渡せ。

     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。



   判決の理由

     建物保護ニ関スル法律(以下建物保護法と略称する。)一条は、建物の所有を
    目的とする土地の賃借権により賃借人がその土地の上に登記した建物を所有する
    ときは、土地の賃貸借につき登記がなくとも、これを以つて第三者に対抗するこ
    とができる旨を規定している。このように、賃借人が地上に登記した建物を所有
    することを以つて土地賃借権の登記に代わる対抗事由としている所以のものは、
    当該土地の取引をなす者は、地上建物の登記名義により、その名義者が地上に建
    物を所有し得る土地賃借権を有することを推知し得るが故である。

     従つて、地上建物を所有する賃借権者は、自己の名義で登記した建物を有する
    ことにより、始めて右賃借権を第三者に対抗し得るものと解すべく、地上建物を
    所有する賃借権者が、自らの意思に基づき、他人名義で建物の保存登記をしたよ
    うな場合には、当該賃借権者はその賃借権を第三者に対抗することはできないも
    のといわなければならない。けだし、他人名義の建物の登記によつては、自己の
    建物の所有権さえ第三者に対抗できないものであり、自己の建物の所有権を対抗
    し得る登記あることを前提として、これを以つて賃借権の登記に代えんとする建
    物保護法一条の法意に照し、かかる場合は、同法の保護を受けるに値しないから
    である。

     原判決の確定した事実関係によれば、被上告人は、自らの意思により、長男D
    に無断でその名義を以つて建物の保存登記をしたものであるというのであつて、
    たとえ右Dが被上告人と氏を同じくする未成年の長男であつて、自己と共同で右
    建物を利用する関係にあり、また、その登記をした動機が原判示の如きものであ
    つたとしても、これを以つて被上告人名義の保存登記とはいい得ないこと明らか
    であるから、被上告人が登記ある建物を有するものとして、右建物保護法により
    土地賃借権を第三者に対抗することは許されないものである。

     元来登記制度は、物権変動の公示方法であり、またこれにより取引上の第三者
    の利益を保護せんとするものである。すなわち、取引上の第三者は登記簿の記載
    によりその権利者を推知するのが原則であるから、本件の如くD名義の登記簿の
    記載によつては、到底被上告人が建物所有者であることを推知するに由ないので
    あつて、かかる場合まで、被上告人名義の登記と同視して建物保護法による土地
    賃借権の対抗力を認めることは、取引上の第三者の利益を害するものとして、是
    認することはできない。また、登記が対抗力をもつためには、その登記が少くと
    も現在の実質上の権利状態と符号するものでなければならないのであり、実質上
    の権利者でない他人名義の登記は、実質上の権利と符合しないものであるから、
    無効の登記であつて対抗力を生じない。そして本件事実関係においては、Dを名
    義人とする登記と真実の権利者である被上告人の登記とは、同一性を認められな
    いのであるから、更正登記によりその瑕疵を治癒せしめることも許されないので
    ある。叙上の理由によれば、本件において、被上告人は、D名義の建物の保存登
    記を以つて、建物保護法により自己の賃借権を上告人に対抗することはできない
    ものといわねばならない。

     なお原判決引用の判例(昭和一五年七月一一日大審院判決)は、相続人が地上
    建物について相続登記をしなくても、建物保護法一条の立法の精神から対抗力を
    与えられる旨判示しているのであるが、被相続人名義の登記が初めから無効の登
    記でなかつた事案であり、しかも家督相続人の相続登記未了の場合であつて、本
    件の如き初めから無効な登記の場合と事情を異にし、これを類推適用することは
    許されない。

     然らば、本件上告は理由があり、原判決には建物保護法一条の解釈を誤つた違
    法があり、右違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決は破棄を
    第一審判決は取消しを免れない。

     原判決の確定した事実によれば、本件土地が上告人の所有であり、被上告人が
    その地上に本件建物を所有し、本件土地を占有しているというのであり、被上告
    人の主張する本件土地の賃借権は上告人に対抗することができないことは前説示
    のとおりであるから、被上告人は上告人に対し、本件土地を地上の本件建物を収
    去して明け渡すべき義務あるものといわねばならない。

     よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、
    裁判官横田喜三郎、同入江俊郎、同山田作之助、同長部謹吾、同柏原語六、同田
    中二郎の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見により、主文のとおり判決
    する。





   借地権の対抗力2(参考法令)

   民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件) 
   1 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百
     二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしな
     ければ、第三者に対抗することができない。
















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