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   不動産売却に関する重要な判例 NO.33

買戻特約と譲渡担保
   裁判年月日 平成18年02月07日 




   裁判所が判断した事項

    買戻特約付売買契約の形式を採りながら目的不動産の占有の移転を伴わない契約
   の性質



   判決の内容

    買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わな
   い契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,
   その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である





   主文

   1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
   2 被上告人の請求をいずれも棄却する。
   3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。



   判決の理由

   1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
   (1) 上告人株式会社A1興産(以下「上告会社」という。)は,平成13年12
    月13日当時,第1審判決別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)
    及びその敷地である同目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有して
    いた。

   (2) 平成12年11月13日,被上告人は,上告人A2に対し,利息を月3分と
    する約定で,1000万円を貸し付け(以下「別件貸付け」という。),その担
    保として,有限会社Dとの間で,同社の所有する土地及び建物について譲渡担保
    契約を締結した(以下,この契約の契約書を「別件契約書」という。)。

   (3) 上告人A2は,別件貸付けに係る利息ないし遅延損害金として,同年12月
    12日,平成13年2月5日,同年3月6日,同年5月8日,同年6月8日にそ
    れぞれ30万円を支払ったのみで,それ以降の弁済をしなかった。そこで,被上
    告人は,別件貸付けに係る債権について,少なくとも利息を回収するため,上告
    人A2が代表取締役を務める上告会社との間で,上告会社所有の本件土地建物に
    ついて買戻特約付売買契約を締結することを考えた。

   (4) 平成13年12月13日,被上告人と上告会社とは,いったん,本件土地の
    売買代金を700万円,本件建物の売買代金を100万円,買戻期間を平成14
    年2月28日までとする買戻特約付売買契約を締結することに合意して契約書
    (以下「変更前契約書」という。)を作成し,司法書士に対し,登記手続を依頼
    した。

   (5) しかし,被上告人代表者は,司法書士が退去した後,売買代金は,合計80
    0万円ではなく,合計750万円でなければ契約を締結することができないと言
    い出し,上告人A2も,750万円の方が買戻しをしやすいとしてこれに応じた
    ことから,被上告人と上告会社は,本件土地の売買代金を650万円,本件建物
    の売買代金を100万円とし,上告会社は平成14年3月12日までに上記売買
    代金相当額及び契約の費用を提供して本件土地建物を買い戻すことができる旨の
    内容の買戻特約付売買契約(以下「本件契約」という。)を締結し,変更前契約
    書の内容を改めた契約書(以下「本件契約書」という。)を作成した。

   (6) 被上告人は,本件契約日に,上告会社に対し,売買代金750万円のうち4
    00万円を支払うこととしたが,上告会社の了承の下,400万円から,買戻権
    付与の対価として67万5000円,別件貸付けの利息9か月分として270万
    円,登記手続費用等の支払に充てるべく司法書士に預託した41万円,以上合計
    378万5000円を控除し,21万5000円を上告会社に交付した。別件貸
    付けの利息として支払われた270万円の領収証には,そのただし書欄に「利息」
    と明記されているのに対し,買戻権付与の対価として支払われた67万5000
    円の領収証にはその記載がない。

   (7) 本件契約日の翌日,被上告人は,司法書士が本件土地建物について変更前契
    約書の内容で登記手続を完了したことを確認し,上告会社に対し,売買代金の残
    金350万円を支払った。

   (8) 上告会社は,平成14年3月12日までに本件契約に基づく買戻しをしなか
    った。

   (9) 本件契約には,買戻期間内に本件土地建物を上告会社から被上告人に引き渡
    す旨の約定はなく,本件建物は本件契約日以降も上告人らが共同して占有してい
    る。

   (10) 本件訴訟は,被上告人が上告人らに対し,本件契約は民法の買戻しの規定が
    適用される買戻特約付売買契約(以下「真正な買戻特約付売買契約」という。)
    であり,被上告人は本件契約によって本件建物の所有権を取得したと主張して,
    所有権に基づき本件建物の明渡しを求めるものであり,上告人らは,本件契約は
    譲渡担保契約であるから被上告人は本件建物の所有権を取得していないと主張し
    て,これを争っている。

   2 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断し,被上告人の請求をい
    ずれも認容すべきものとした。

   (1) 別件契約書には,「買戻約款付譲渡担保契約書」という標題が付されている
    が,変更前契約書にも,本件契約書にも,「買戻約款付土地建物売買契約書」と
    いう標題が付されている。

   (2) 上告人らは,被上告人が控除した67万5000円は本件契約による貸付け
    に係る3か月分の利息であると主張するが,別件貸付けの利息として支払われた
    270万円の領収証にはそのただし書欄に「利息」と明記されているのに対し,
    買戻権付与の対価として支払われた67万5000円の領収証にはその記載がな
    いので,これを認めることはできない。

   (3) 上告人らは,上告会社は被上告人から371万5000円しか受け取ってお
    らず,このような少額の代金で上告会社が時価1800万円を下らない本件土地
    建物を売却するはずはないと主張するが,上告会社が371万5000円しか受
    け取ることができなかったのは,買戻権付与の対価,別件貸付けに係る利息,登
    記手続費用の合計378万5000円が控除されたからにほかならず,本件土地
    建物は飽くまで750万円と評価されているし,本件土地建物の時価が1800
    万円を下らないと認めるに足りる証拠もない。

   (4) したがって,本件契約は,譲渡担保契約ではなく,真正な買戻特約付売買契
    約と認められる。

   3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次の
    とおりである。

   (1) 真正な買戻特約付売買契約においては,売主は,買戻しの期間内に買主が支
    払った代金及び契約の費用を返還することができなければ,目的不動産を取り戻
    すことができなくなり,目的不動産の価額(目的不動産を適正に評価した金額)
    が買主が支払った代金及び契約の費用を上回る場合も,買主は,譲渡担保契約で
    あれば認められる清算金の支払義務(最高裁昭和42年(オ)第1279号同4
    6年3月25日第一小法廷判決・民集25巻2号208頁参照)を負わない(民
    法579条前段,580条,583条1項)。このような効果は,当該契約が債
    権担保の目的を有する場合には認めることができず,買戻特約付売買契約の形式
    が採られていても,目的不動産を何らかの債権の担保とする目的で締結された契
    約は,譲渡担保契約と解するのが相当である。そして,真正な買戻特約付売買契
    約であれば,売主から買主への目的不動産の占有の移転を伴うのが通常であり,
    民法も,これを前提に,売主が売買契約を解除した場合,当事者が別段の意思を
    表示しなかったときは,不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなして
    いる(579条後段)。そうすると,買戻特約付売買契約の形式が採られていて
    も,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担
    保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相
    当である。

   (2) 前記事実関係によれば,本件契約は,目的不動産である本件建物の占有の移
    転を伴わないものであることが明らかであり,しかも,債権担保の目的を有する
    ことの推認を覆すような特段の事情の存在がうかがわれないだけでなく,かえっ
    て,@ 被上告人が本件契約を締結した主たる動機は,別件貸付けの利息を回収
    することにあり,実際にも,別件貸付けの元金1000万円に対する月3分の利
    息9か月分に相当する270万円を代金から控除していること,A 真正な買戻
    特約付売買契約においては,買戻しの代金は,買主の支払った代金及び契約の費
    用を超えることが許されないが(民法579条前段),被上告人は,買戻権付与
    の対価として,67万5000円(代金額750万円に対する買戻期間3か月分
    の月3分の利息金額と一致する。)を代金から控除しており,上告会社はこの金
    額も支払わなければ買戻しができないことになることなど,本件契約が債権担保
    の目的を有することをうかがわせる事情が存在することが明らかである。
     したがって,本件契約は,真正な買戻特約付売買契約ではなく,譲渡担保契約
    と解すべきであるから,真正な買戻特約付売買契約を本件建物の所有権取得原因
    とする被上告人の上告人らに対する請求はいずれも理由がない。

   4 以上によれば,本件契約を真正な買戻特約付売買契約と解し,被上告人の請求
    を認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法
    令の違反がある。論旨は,上記の趣旨をいうものとして理由がある。したがって
    原判決を破棄し,被上告人の請求を認容した第1審判決を取り消した上,被上告
    人の請求をいずれも棄却することとする。
     よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。





   買戻特約と譲渡担保(参考法令)

   民法369条(抵当権の内容)
   1 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動
     産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 
   2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合において
     は、この章の規定を準用する。 



   民法579条(買戻しの特約) 
   1 不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った
     代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合に
     おいて、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の
     利息とは相殺したものとみなす。 





















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